カープラス式(読み)カープラスシキ

化学辞典 第2版 「カープラス式」の解説

カープラス式
カープラスシキ
Karplus equation

ビシナルの位置(H-C-C-H)にあるプロトン間のNMR結合定数 3J とねじれ角ωの関係を示す式.M. Karplusにより1959年に提案された.もっとも基本的な式は以下のとおりである.

 3J = 8.5 cos2ω - 0.28 Hz  (0° ≦ ω ≦ 90°)

 3J = 9.5 cos2ω - 0.28 Hz  (90° ≦ ω ≦ 180°)

結合定数は,ねじれ角が0°または180°(アンチ)のとき約8~9 Hz,60°(ゴーシュ)のとき約2 Hz,90°のときほぼ0になる.C-C単結合の回転が速い場合は,配座異性体の存在比に依存した加重平均の値が観測され,7~8 Hz 程度となることが多い.この関係式は,NMRを用いた有機化合物立体化学の研究法として重要であり,立体配座の解析や立体配置の決定などに応用される.たとえば,いす形シクロヘキサン誘導体において,ビシナルプロトン間の結合定数は,両者がアキシアルのとき(ω ≈ 180°)大きく,両者がエクアトリアルのとき(ω ≈ 60°)小さいのはこの関係から説明できる.結合定数は,炭素原子混成やそれに結合した置換基電気陰性度などの影響を受けるので,これらを補正するためのパラメーターや式も知られている.ほか核種のNMRでも同様な関係が成り立つ場合がある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のカープラス式の言及

【核磁気共鳴】より

…たとえば-CH-CH-単位におけるスピン結合定数は2本のC-H結合のなす二面角の関数であり,近似的に J=A・cos2θ ……(4) で表される。式(4)または同等の内容をもつ式をカープラス式という。またプロトンNMRの場合,各ピークの曲線とベースラインが囲む面積(積分強度)はプロトン数に比例する。…

※「カープラス式」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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