オルガヌム(読み)おるがぬむ(英語表記)organum ラテン語

デジタル大辞泉 「オルガヌム」の意味・読み・例文・類語

オルガヌム(〈ラテン〉organum)

9~13世紀、ヨーロッパで流行した初期多声音楽グレゴリオ聖歌などの旋律を主声部とし、いくつかの声部を付け加えた楽曲

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精選版 日本国語大辞典 「オルガヌム」の意味・読み・例文・類語

オルガヌム

〘名〙 (organum)
② 九世紀から一三世紀の初期多声部楽曲。グレゴリオ聖歌を定旋律とし、それに対旋律をつけた楽曲。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オルガヌム」の意味・わかりやすい解説

オルガヌム
おるがぬむ
organum ラテン語

ヨーロッパの初期多声音楽の一形態既存の旋律(通常グレゴリオ聖歌)を主声部とし、第2、さらには第3、第4声部を付加した楽曲。最古の例は9世紀の音楽理論書にみられ、11世紀までいくつかの理論書にその実例があげられている。そこでは、主声部に対し対声部が4度または5度下で1音対1音で平行進行する平行オルガヌム、主声部を下声に配し、反進行、斜進行、声部の交差なども用いて対声部を上声に付してゆく自由オルガヌムがみられる。実用音楽としては、フランスのシャルトル写本、イギリスの『ウィンチェスター・トロープス集』などがあるが、その数は多くない。

 12世紀になるとその数は増大し、構成も秩序だったものとなり、とくに南フランスのサン・マルシャル修道院とスペインのサンティアゴ・デ・コンポステラ大聖堂で栄えた。そこでは、主声部を下声に置き、対声部を1音対1音ばかりでなく1音対多音でメリスマ的に付し、音程関係や声部進行のうえでも多彩に動いてゆく。12世紀後半から13世紀にかけては、その中心パリのノートル・ダム大聖堂に移り、レオニヌス、ペロティヌスらによって上声の対声部にモード・リズムが導入され、メリスマ的部分とシラビック部分が対比的に現れる形態が成立した。ときには3声、4声オルガヌムも作曲され、ミサおよび聖務日課のレスポンソリウム聖歌を定旋律とするポリフォニー楽曲を意味するようになった。

[今谷和徳]

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百科事典マイペディア 「オルガヌム」の意味・わかりやすい解説

オルガヌム

9−13世紀に行われた初期の多声音楽(ポリフォニー参照)。語源はギリシア語オルガノンorganon(〈道具〉の意)で,楽器名オルガンと同源語。グレゴリオ聖歌に一つ以上の声部を加えて歌うもので,声部間の関係で,平行,斜行,メリスマ的オルガヌムなどと分類される。12−13世紀にかけては3〜4声の作品も数多く生まれた。→ディスカント
→関連項目対位法フクバルドモテット

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オルガヌム」の意味・わかりやすい解説

オルガヌム
organum

9~13世紀にかけて行われた初期多声音楽。グレゴリオ聖歌旋律を主声部として,それに対声部を付加して形成。 (1) 平行オルガヌム オルガヌム記述の最古の資料『音楽提要』 (9世紀) には,主声部に対し4~5度下で,対声部が1音符対1音符で進む単純な平行オルガヌムの例があげられている。 (2) 自由オルガヌム  11世紀になると,主声部と対声部が反進行,斜進行,声部交差などを行うことから発展した自由オルガヌムが一般的になる。 (3) メリスマ的オルガヌム  12世紀には,主声部1音に対して対声部がメリスマ的に細く動くメリスマ的オルガヌムが現れる。主声部は対声部の下に記譜されて次第に楽曲の基盤としての定旋律に定着してゆく。ただし,実際に演奏を意図して記譜されたオルガヌムは以上のような図式的発展段階を離れて,理論書の実例に比べてより自由で多様であった。

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