改訂新版 世界大百科事典 「アリ(蟻)塚」の意味・わかりやすい解説
アリ(蟻)塚 (ありづか)
ant hill
termitarium
アリやシロアリ類が地中から地上へ小高く盛り上げてつくる巣で,内部は多数の小室と入り組んだ通路からなり,女王を中心に数万以上の構成員が社会生活をしている。アリ類で塚をつくる種は少なく,日本ではエゾアカヤマアリが北海道から本州中部山地にかけて分布し,カラマツ林や草地などに針葉樹の葉や枯枝,土などを積み上げて塚(最大,直径2m,高さ50cm)をつくる。この塚はその下にある巣の延長としての機能のほかに,巣の保温と雨水の浸入を防ぐ働きがある。塚をつくるシロアリ類はキノコシロアリ亜科とツカシロアリ亜科に多く,いずれも分布は熱帯に限られている。キノコシロアリ類の巣には高さ6m,直径30mに達するものがあり,内部は多数の小室と菌室から構成され,上下の空気室と外壁の空気管によって温・湿度とガス濃度が調節されている。ツカシロアリ類の巣には菌室がなく,オーストラリアのAmitermes meridionalisの塚は1辺4mの正方形板状のものが地面につきささったような形で,正確に南北を向くことで有名。
→シロアリ
執筆者:森本 桂
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報