アジア通貨協力(読み)あじあつうかきょうりょく(英語表記)Asian monetary cooperation

知恵蔵 「アジア通貨協力」の解説

アジア通貨協力

元来、アジア通貨協定は二国間で締結されていたが、2004年5月のASEAN+3財務相会議で、日本の谷垣財務相が、通貨危機に備えて、多国間で介入資金を融通する仕組みを提唱した。これは1997年の通貨危機に際して浮上したアジア通貨基金(AMF)構想にも通じる。当時は、危機に直面した諸国から日本の積極的な役割に期待が高まったが、米国がこの構想に反対し、中国も冷淡であった。しかし00年のチェンマイ・イニシアチブで二国間通貨スワップを整備することが合意され、その後、外貨融通枠の倍増や、意思決定手続きの簡素化なども取り組まれてきた。日本にとってアジア諸国との貿易は全体の半分近くを占めるので、域内の為替安定は重要性を増している。中国は、東南アジアとの自由貿易協定交渉に熱意を見せているので、国際金融協調にも前向きになってきている。アジア債券市場を育成する試みもこの通貨協力の一環であり、すでに日中韓とASEAN諸国の間で動き出している。また06年5月のASEAN+3財務相会議では、新たに地域通貨単位の創設を検討することも合意された。とはいえ欧州ユーロが誕生した経過に比べると、アジアの通貨協力にはまだ多くの経済的、政治的な障害が残されている。

(石見徹 東京大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報