ののしる

精選版 日本国語大辞典 「ののしる」の意味・読み・例文・類語

ののし・る

[1] 〘自ラ五(四)〙
① 人が声高に物をいう。
(イ) 大勢が声高く言い騒ぐ。声やかましく騒ぎたてる。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)一〇「号(さけ)び動(ノノシル)声ありて悽しび感み」
※土左(935頃)承平四年一二月「わかれがたくおもひて、〈略〉ののしるうちに夜更けぬ」
(ロ) 一人が声高らかに言う。盛んに言う。仰々しく言う。
蜻蛉(974頃)上「人や聞くらんとも思はず、ののしり申すを聞くもあはれにて」
② 大きな物音がする。また、他動詞的に用い、人間以外のものが、騒がしい物音、鳴き声をたてる。
※地蔵十輪経元慶七年点(883)序「法雷を響(ノノシリ)て弁を吐(つは)はき、慮を静めて微(ひ)に通ずる者は」
源氏(1001‐14頃)浮舟「犬どもの、出で来てののしるも」
③ 世間の評判になる。また、善悪ともにやかましく噂する。
※宇津保(970‐999頃)祭の使「只今ののしる人にこそはあんめれ。上達部になりぬべき君なめれば」
権勢が盛んである。勢力があり、時めいている。
大和(947‐957頃)一二四「左の大臣の北の方にてののしりたまひける時」
⑤ ことごとしいことをいう。大げさにえらそうなことをいう。
読本春雨物語(1808)海賊「歌よみて道とののしる輩ならねば、物とへ」
[2] 〘他ラ五(四)〙 (罵) 大きな声で非難する。しかりとばす。また、口ぎたなく悪口を言う。
※大和(947‐957頃)六三「人のむすめをしのびてえたりけるを、親ききつけて、ののしりてあはせざりければ」

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