『大学の起源』(読み)だいがくのきげん

大学事典 「『大学の起源』」の解説

『大学の起源』
だいがくのきげん

日本における本格的な大学史研究は,H. ラシュドール,H.著,横尾壮英訳『大学の起源』上・中・下巻,東洋館出版社(1968~70年)刊行に始まるといっても過言ではない。それまでにも大久保利謙『日本の大学』創元社(1943年),皇至道『大学制度の研究』柳原書店(1955年),島田雄次郎『ヨーロッパの大学』至文堂(1964年)などの先駆的な研究はあった。しかし,大学の歴史や現状に関心を抱く研究者や大学人に,そもそも大学とは何か,いかにしてヨーロッパ中世に大学が誕生したのか,その基本的性格はいかなるものか等々について豊富で正確な知識を提供し,大学史への関心・興味を喚起したのはまごうかたなく本書であった。本書はHastings Rashdall, The Universities of Europe in the Middle Ages, 1895, A new edition by F.M. Powicke and A.B. Emden, Oxford: The Clarendon Press, 3 vols, 1936の翻訳(注を除く)である。1895年に2巻本で出版された原著に新しい資料や解釈を加味した増補改訂版は,最も包括的なヨーロッパ中世大学史の古典的著作としての地位をさらに確固たるものとし,その翻訳書は日本における大学史研究の礎となった。
著者: 安原義仁

出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報

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