XMASS(読み)えっくすます

日本大百科全書(ニッポニカ) 「XMASS」の意味・わかりやすい解説

XMASS
えっくすます

東京大学宇宙線研究所の低バックグラウンド多目的宇宙素粒子検出器。Xenon detector for weakly interacting MASSive particlesの省略形。スーパーカミオカンデのある岐阜県飛騨(ひだ)市の神岡鉱山に建設され、2011年(平成23)春から本格的な観測を開始。宇宙に多量に存在すると考えられている未発見の物質である暗黒物質ダークマター)を直接検出することを当面の目的としているが、将来はより大型化して低エネルギー太陽ニュートリノや二重β(ベータ)崩壊の検出を予定している。

 検出器には液体キセノン(約マイナス100℃)が用いられているが、キセノンは、発光量が多く、1トンクラスの大型化が容易であり、液体・気体・固体の各相が利用可能で内部のバックグラウンドの原因であるウラントリウムなどを極端に少なくできる利点がある。そのキセノンの性質と放射線バックグラウンドを極限まで低減させた光電子増倍管を組み合わせて、液体キセノンの原子核に暗黒物質が衝突した際に発生する微弱な光を増倍管でとらえ、暗黒物質の正体と思われるWIMP(Weak Interactive Massive Particles)という未知の粒子の直接検出に挑んでいる。光電子増倍管の改良と検出器の大型化(キセノンの量を5トンに)に向けて、改良中である。

[編集部 2023年2月16日]


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