MOS(モス)トランジスター(読み)モストランジスター

化学辞典 第2版 の解説

MOS(モス)トランジスター
モストランジスター
metal-oxide-semiconductor transistor

電界効果トランジスターの一種で,図に代表的な構造を示す.抵抗率の高いp型シリコンの表面を高温で酸化すると,表面にSiO2の絶縁層ができると同時に,その直下に O2 が拡散してn型層が形成される.SiO2の表面に真空蒸着法などで金属をつけてゲート電極とする.電流を流し込むソース電極と,取り出すドレイン電極になる部分にリンなどを拡散して n 領域を形成してその上に金属電極をつける.ゲートに正電圧を印加すると,ゲート電極直下のn領域の伝導チャンネル部分に電子が引張り込まれて,チャンネル部分の抵抗が減少し,ソース-ドレイン間の電流は増加する(enchancement mode).逆にゲート電圧を負にすると,チャンネル部分の電子が押し下げられて電子が減少して,ソース-ドレイン間の電流は減少する(depletion mode).また,チャンネル部分はp型でもよく,この場合には,enchancement modeのみになる.ゲート部の構造からMOSトランジスターとよばれている.しかし,絶縁層は必ずしもoxideではなく窒化シリコンなども用いられるので,この場合oxideのかわりにinsulator(絶縁体)のIをとってMISトランジスターというほうが一般的である.MOSトランジスターは,接合型トランジスターと比べて入力インピーダンスが高くて使いやすいので,現在,集積回路に多く使われている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報