FabLab(読み)ふぁぶらぼ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「FabLab」の意味・わかりやすい解説

FabLab
ふぁぶらぼ

デジタル制御の3Dプリンターや、各種カッターなどの工作機械を備えた市民工房。Fabは「すばらしい、愉快なFabulous」と「物づくりFabrication」の二つに通じ、ファブラボは、「市民が楽しみながら物づくりに取り組む実験室」との意味がこめられた造語である。(1)だれでも自由に利用できる、(2)3Dプリンター、3次元スキャナー、各種カッターなどの最新工作機械を配備している、(3)世界中のファブラボ間で情報交換する、などの特徴をもつ。各種機械に習熟した技術者が常駐し、素人(しろうと)がものづくりに必要なスキルを習得できる。「データを物にし、物をデータ化する」との概念のもと、一般市民のアイデアを具現化し、プログラミング計測・加工技術、通信技術を駆使して、工場の大量生産や大学の学術研究ではできなかった「草の根発明」を目的とする。

 ファブラボの概念は、マサチューセッツ工科大学MIT教授のガーシェンフェルドNeil Gershenfeld(1959― )が提唱した。「コンピュータが巨大メインフレームからパソコンに進化し市民に普及したように、工作機械も工場から個人用へ進化する」との仮説に基づき、1998年、ファブラボをボストンの旧スラム街とインドの田舎に設置。その後、全米各地、ノルウェ-、スペインガーナ南アフリカなどへと広げた。2005年に『FABThe Coming Revolution on Your Desktop-From Personal Computers To Personal Fabrication』(邦題『ものづくり革命 パーソナル・ファブリケーションの夜明け』)を出版し、ファブラボの概念が世界に広まった。2021年時点で、世界120以上の国・地域に2000を超えるファブラボがあり、フランチャイズではなく自発的に増加を続けている。日本では2011年(平成23)に神奈川県鎌倉市と茨城県つくば市に初めてファブラボが誕生し、その後全国に広がった。行政や大学が支援するファブラボのほか、NPO・NGOの運営、企業経営者ら個人が支援するものまで、その形態はさまざまである。

[編集部 2021年12月14日]

『ニール・ガーシェンフェルド著、糸川洋訳『ものづくり革命――パーソナル・ファブリケーションの夜明け』(2006・ソフトバンククリエイティブ)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例