鳥栖(市)(読み)とす

日本大百科全書(ニッポニカ) 「鳥栖(市)」の意味・わかりやすい解説

鳥栖(市)
とす

佐賀県東端、福岡県境にある市。1954年(昭和29)三養基(みやき)郡鳥栖、田代(たしろ)の2町と基里(きさと)、麓(ふもと)、旭(あさひ)の3村が合併して市制施行。8世紀『肥前国風土記(ひぜんのくにふどき)』の養父(やぶ)郡の条に「鳥樔(とす)郷」とある。北西部には、九千部(くせんぶ)山(848メートル)など脊振(せふり)山地の東部山系が福岡県境に連なる。福岡県の久留米(くるめ)・小郡(おごおり)両市と接する南東部には筑後(ちくご)川水系の沖積低地が開け、かつて水害常襲地をなした。沖積低地に臨む低位段丘面などに中心市街地がある。

 近世期に二分され、北東部は対馬藩(つしまはん)(宗(そう)氏)の田代領、南西部は佐賀藩(鍋島(なべしま)氏)に属し、言語・習慣などに相違をもたらした。古来交通要衝の地で、轟木(とどろき)、田代は近世長崎街道の宿駅をなし、明治後の鳥栖は鉄道の町で知られた。鳥栖駅は、JR鹿児島本線、長崎本線の分岐駅であり、かつてはJR久大本線(きゅうだいほんせん)(久留米―大分)の列車にも当駅発着の設定が多く、九州最大級の機関区・操車場規模を誇った。2011年(平成23)には、九州新幹線鹿児島ルートの全線開通に伴い、新鳥栖駅が開業した。また国道3号と34号の分岐点にあたり、さらに九州自動車道と大分、長崎の両自動車道が交差する鳥栖ジャンクションがあり、その西に鳥栖インターチェンジをもつ。そのほか、鳥栖筑紫野(ちくしの)道路も通じる。このような交通位置を背景に、第二次世界大戦前もせっけん製粉製糸などの工業立地をみた。戦後1960年代以降、工業開発が目だち、まず轟木工業団地が造成され、新宝満(しんほうまん)川からの県東部工業用水道も建設された。工業生産額はつねに県内のトップクラスで、2020年製造品出荷額約3834億円は県下市町村中第1位。食料、化学など内陸の道路輸送型業種の進出が目だつ。田代地区における対馬藩時代からの売薬関係の伝統産業も近代化が進んだ。流通基地の鳥栖商工団地には、トラックターミナルや九州卸売センターなどが立地。産業技術総合研究所の九州センターもあり、福岡市に近く、1984年(昭和59)久留米、鳥栖テクノポリスの指定を受け、内陸工業都市として発展した。

 装飾古墳田代太田古墳安永田遺跡(やすながたいせき)は国指定史跡。萬歳寺(まんざいじ)の「絹本著色見心来復像」は国指定重要文化財。四阿屋(あずまや)神社御田舞(おんだまい)は選択無形民俗文化財。南東部低地は圃場(ほじょう)整備が進む。面積71.72平方キロメートル、人口7万4196(2020)。

[川崎 茂]

『『鳥栖市史』(1973・鳥栖市)』『『鳥栖市誌』5巻・年表、総索引1巻(2005~2010・鳥栖市)』


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