霧海篪(読み)むかいぢ

改訂新版 世界大百科事典 「霧海篪」の意味・わかりやすい解説

霧海篪 (むかいぢ)

尺八楽古典本曲の曲名。曲名中〈篪(ち)〉とは古代中国の竹製の笛の一種を意味する字である。普化宗の所伝によれば,古典本曲中最古の曲の一つとされ,《虚鈴(霊)(きよれい)》《虚空(こくう)》とともに〈古伝三曲(または三虚霊)〉と呼ばれて,とくに尊重すべき秘曲とされている。曲の起源・伝説については《虚空》の項を参照されたい。芸系(流派)により曲名の呼び方に多少の差異があり,また,同名でも流派が異なれば異曲である。西園流と対山流の曲はほぼ同曲で,いずれも単に《霧海篪》と称する。明暗真法流には《真(しん)霧海篪》《行(ぎよう)霧海篪》《草(そう)霧海篪》と呼び分ける3種の別曲が伝承されていた。琴古流の曲はまた別曲で,《霧海篪鈴慕(むかいぢれいぼ)》と呼ばれている。
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世界大百科事典(旧版)内の霧海篪の言及

【虚空】より

…やがて霧は消え,晴れ渡った虚空から別の妙音が響く。夢さめた寄竹は2種の妙音を尺八曲となし,帰参して師の覚心に聞かせ,覚心はその2曲に《霧海篪(むかいぢ)》と《虚空篪》の名を与えた。この伝説ゆえにこれら2曲は《虚鈴(霊)》とともに古伝三曲(または三虚霊)と呼ばれ,最古の曲としてとくに尊重されている。…

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