雁塔聖教序(読み)がんとうしょうぎょうのじょ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「雁塔聖教序」の意味・わかりやすい解説

雁塔聖教序
がんとうしょうぎょうのじょ

聖教序とは新訳の経論に対して皇帝より賜る御製の序であるが、今日、648年(貞観22)唐の太宗が玄奘(げんじょう)の懇請によってつくった「大唐三蔵聖教序」がもっとも著名である。このとき、皇太子であった高宗も述聖記を撰(せん)した。唐の都長安(現西安)の大慈恩寺の大雁塔には、第一層の南面の両側に小室を設け、東側に聖教序碑、西側に述聖記碑をはめ込む。ともに、当時の能書で初唐の三大家として名高い褚遂良(ちょすいりょう)の書で、653年(永徽4)の年記が加えられている。碑はいずれも高さ177.8センチメートル、幅86.6~100センチメートルの黒大理石が使われており、良好な状態で伝存する。虞世南(ぐせいなん)や欧陽詢(おうようじゅん)の楷書(かいしょ)とは趣(おもむき)を異にした新しい楷書体で、伊闕仏龕碑(いけつぶつがんのひ)(641)、孟法師碑(もうほうしのひ)(642)などの遺品のなかでも、遂良独自の書風を完成させた最高傑作。楷書の範として尊重される。

[島谷弘幸]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「雁塔聖教序」の意味・わかりやすい解説

雁塔聖教序
がんとうしょうぎょうじょ
Yan-ta-sheng-jiao-xu

中国,陝西省西安市の慈恩寺大雁塔にはめこまれている聖教序碑。玄奘三蔵が永徴3 (652) 年,寺内に雁塔を建て,翌年塔上の石室に「聖教序碑」と「述聖記碑」の2碑を立てた。褚遂良の書。彼の代表的楷書で,細身でありながら大ぶりの悠然とした書風を示す。

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