長沼郷(読み)ながぬまごう

日本歴史地名大系 「長沼郷」の解説

長沼郷
ながぬまごう

静岡平野の東部谷津やつ山東麓に位置する中世郷。江戸期の南長沼村・北長沼村一帯に比定される。貞治二年(一三六三)六月六日に、宝樹ほうじゆ院領を安堵した前駿河守護今川範国書下(写、諸家文書纂)に「長沼郷内壱町一段大此内屋敷弐段八斗、八段分米弐石四斗」とみえる。このことは、永正六年(一五〇九)九月六日の今川氏親判物(写、駿河志料)でも同様に安堵されている。この間、文明一二年(一四八〇)六月には上洛する太田資長(道灌)が当郷を通行し、「なか沼に生る真薦をかる賤の袂もかくやぬれハまさらし」という和歌を詠んでいる(平安紀行)

長沼郷
ながぬごう

和名抄」諸本に「奈加奴」の訓がある。郷域には現岡山市長沼ながぬま西大寺五明さいだいじごみよう、現邑久郡邑久町豊原とよはらなどの千町せんちよう川流域に比定されている(「大日本地名辞書」「岡山県通史」など)。推定郷域には縄文時代の大橋おおはし貝塚がある。藤原宮跡から木簡(表)大伯郡長沼里」「(裏)県使加比俵」が出土している。右の木簡は藤原宮跡出土である点で和銅三年(七一〇)の平城遷都以前であり、また「大伯郡」とあることから大宝令施行以後のものである。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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