酒さ(読み)しゅさ(英語表記)Rosacea

六訂版 家庭医学大全科 「酒さ」の解説

酒さ
しゅさ
Rosacea
(皮膚の病気)

どんな病気か

 中年以降に主として顔面に生じる原因不明の慢性炎症性疾患で、紅斑性酒さ(こうはんせいしゅさ)酒さ性痤瘡(しゅさせいざそう)は女性に多く、鼻瘤(びりゅう)は男性に多くみられます。

原因は何か

 根本的な原因はよくわかっていません。症状を悪化させる要因としては、精神的緊張、紫外線、温熱寒気飲酒香辛料などがあります。女性では閉経前後に悪化しやすいこと、片頭痛合併が多いことなどから、血管を拡張させたり収縮させたりする血管運動神経の異常が考えられています。

症状の現れ方

 鼻、眉間、頬、あごなど顔面の中心に、ほてり感を伴う潮紅、毛細血管の拡張がみられる症状は、第Ⅰ度(紅斑性酒さ)と呼ばれます。化粧品や石鹸などの軽い刺激でもひりひりしたり、灼熱(しゃくねつ)感が生じ、いわゆる敏感肌といわれます。

 紅斑性酒さの症状に加えて、赤い丘疹や膿疱(のうほう)が多発する症状は第Ⅱ度(酒さ性痤瘡)、鼻や頬を中心に結合組織の増殖を伴って隆起し、腫瘤(しゅりゅう)状を示すものは第Ⅲ度(鼻瘤)と呼ばれます(図35)。

治療の方法

 完治しにくく経過が長いのが特徴ですが、対症療法により良好な状態にコントロールすることが可能です。症状の強い時はテトラサイクリン系抗生剤(ミノマイシン、ビブラマイシンなど)の内服が有効です。副腎皮質ステロイドの塗り薬は一時的には効くようにみえますが、病態を悪化させるので使われません。原因で述べた悪化因子をできるだけ避けることも必要です。

病気に気づいたらどうする

 なかなか治らず、よくなっても軽微な刺激で急に増悪することがあります。不安も大きいと思いますが、皮膚科専門医のもとでコントロールを続けてください。

末木 博彦


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

知恵蔵mini 「酒さ」の解説

酒さ

顔面に赤みや小さな吹き出物が現れる、進行性の炎症性皮膚疾患。30代以上の人に多く見られる。発疹ができることからニキビと間違われることがあるが、頬の赤みやほてりが起こる点などで異なる。原因はまだ完全に明らかにされていないが、遺伝的な要因や慢性的な化粧品かぶれなどではないかと推測されている。カフェイン入りの飲料は皮膚の血管を拡張させる可能性があるため、症状緩和のためには避けるべきだというのが長年常識とされていたが、同疾患の発症リスクとカフェインの摂取量が逆相関になっていることが米国の研究チームによって発見されたことから、カフェイン入り飲料の摂取が同疾患の予防に有用である可能性が2018年に示された。

(2019-2-27)

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