造雄腺(読み)ぞうゆうせん(英語表記)androgenic gland

改訂新版 世界大百科事典 「造雄腺」の意味・わかりやすい解説

造雄腺 (ぞうゆうせん)
androgenic gland

雄性腺ともいう。甲殻類,軟甲亜綱に属する動物の内部生殖器官の一部に付着する紐状の腺性内分泌組織で,雌雄異体の種では雄に,雌雄同体の種では雄相のときにみられる。多くの場合,輸精管か貯精囊の壁に付着する数個の細胞からなり,等脚目の一部では精巣の先端に付着している。造雄腺は最初ワタリガニの一種で記載されたものであるが,シャルニオ・コットンH.Charniaux-Cotton(1954)がオオハマトビムシでその生理作用を明らかにし,この名をつけた。造雄腺を雌へ移植したり,雄から造雄腺を除去する実験により,造雄腺が雄性分化を誘導することが明らかになった。造雄腺がホルモンを分泌することもわかっており,若い雌のダンゴムシに造雄腺を移植したり,抽出したホルモンを継続して注射すると,雌に造雄腺が発達し,機能的な雄となることから,このホルモンは雄性決定物質ともみられる。このホルモンはまだ純化されたとはいえないが,分子量1万6000前後の酸性タンパク質である。
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世界大百科事典(旧版)内の造雄腺の言及

【間性】より

…一般に後から発生する器官ほど性転換の影響をうける度合が大きく,転換から後の発生期間の長い個体ほど強い間性になるが,これを間性の時の法則という。甲殻類では,造雄腺が発見され,この作用が発生の途中で抑えられると間性になることがわかった。脊椎動物では,間性とホルモンとの関係が明らかになり,メダカ稚魚やオタマジャクシの雌雄に反対の性ホルモンを与えて実験的に間性を誘起することができる。…

※「造雄腺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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