補整的財政政策(読み)ほせいてきざいせいせいさく(英語表記)compensatory fiscal policy

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「補整的財政政策」の意味・わかりやすい解説

補整的財政政策
ほせいてきざいせいせいさく
compensatory fiscal policy

経済の不安定を財政収支の調整によって修正し,安定化をはかろうとする政策。 J.M.ケインズは『雇用・利子および貨幣の一般理論』において,公共投資の需要拡張効果を強調したが,その後 A.H.ハンセンはさらにこの考えを発展させて,これに「補整財政政策」という名称を与えた。ハンセンによれば,この「補整」という概念は,民間投資の減退を公共投資が補整するという意味であった。第2次世界大戦後ケインズ経済学の発展とともに,こうして補整的財政政策の理論的基礎は固まり,現代経済政策の最も有力な武器となっている。補整的財政政策は通常以下の3つに分類できるとされる。 (1) ビルトイン・スタビライザーを利用するもの。 (2) フォーミュラ・フレクシビリティに基づくもの。 (3) 自由裁量によるもの。これは議会と行政当局とが経済情勢の変化に応じて自由に税率とか財政支出水準などの財政手段を変更して経済の安定化をはかろうとするもので,最も積極的な措置といえる。しかしこの方式は議会による審議などでかなりの遅れを伴うこともあり,期待される効果が得られないばかりか,かえって経済的不安定を増幅することさえ生じかねない。そこで現代の補整的財政政策では,その効果は間接的ではあるが,より機動的な金融政策を併用するという方法が多くとられている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報