腎静脈血栓症

内科学 第10版 「腎静脈血栓症」の解説

腎静脈血栓症(腎と血管障害)

定義・概念
 腎静脈に血栓が形成され,腎がうっ血,腫脹し,蛋白尿や血尿をきたした病態を指す.
病因・病態生理
 担癌患者やネフローゼ症候群経口避妊薬,小児の脱水時,外傷など血栓形成傾向にある病態で出現する.腎では糸球体で血液が濃縮されるため,腎静脈内で血栓形成が最も亢進すると考えられる.深部静脈血栓症肺塞栓を合併することもある.
臨床症状
 片側性,両側性いずれのこともある.下大静脈にまで及ぶこともある.通常慢性に発症するが,急性型もあり劇症の経過を辿る.慢性型では潜在性であり,肺塞栓を合併して唯一の症状を示すことが多い.ネフローゼ症候群に合併すると尿蛋白が増加し,腎機能低下が徐々に進行する.膜性腎症で最も頻度が高く,続いて膜性増殖性腎炎,微小変化型の順である. 急性型は,外傷や小児での重篤な脱水時に発症し,腎サイズは増大する.腎梗塞を誘発するため,側腹部痛,血尿,血清LDHの著明上昇を認めることが多い.急性腎不全に陥ることもある.基礎にネフローゼ症候群がない場合,有意な蛋白尿はまれである.
診断・治療
 臨床的診断と抗凝固療法が優先される.確定には三次元造影スパイラルCTやMRIが必要となるため確定診断のメリットを十分考慮し実施する.再灌流療法 (局所血栓溶解療法) やカテーテル血栓除去術も考慮する.[木村玄次郎]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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