背負い袋(読み)せおいぶくろ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「背負い袋」の意味・わかりやすい解説

背負い袋
せおいぶくろ

背負い運搬具の一種。コダシ、ドウラン、タミノ、テゴなどとよばれる。標準的なものは、物を入れる編み袋に、その口の乳(ち)に紐(ひも)を通して締め、負いやすく紐を調節できるよう仕上げられている。袋の編み方は一様でなく、素材は藁(わら)のほかガマの茎、ヤマブドウアケビのつる、またはカバ皮などと変化に富む。袋に入れて運ぶものの容積に応じて利用でき、背負いながらも両手があくことから、畑作業に出向くおりや山行きに際して広く使われてきた。往(ゆ)きには、作業用の鎌(かま)や昼食用の弁当などを入れ、帰りには、収穫した野菜の類を背負ってくるなど小回りがきいて重宝がられた。山菜採り、キノコ狩りなどに赴く場合にも同様に用いられてきた。山野を駆け回り、やぶをこぎ分けて歩行するには、背負い袋は、背負い籠(かご)、背負い梯子(ばしご)にみられない便利さがある。出猟に際して携行する背負い袋には、編み袋の外側に網を一枚取り付けた特色あるものが考案されていて、袋の中には弁当などの食料品を、袋の外側と網を張った間には野ウサギなどの獲物を入れて、使い分けている例がある。実際には、両肩支持の使い方が広くみられるものの、頭部支持などの特例もあり、一様ではない。

天野 武]

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