家庭医学館 の解説
かたかんせつしゅういえんしじゅうかたごじゅうかた【肩関節周囲炎(四十肩/五十肩) Periarthritis Scapulo-humeralis】
一般には、四十肩、五十肩と呼ばれていますが、正式な病名は、肩関節周囲炎といいます。関節の周りにある組織の変化や、炎症などによって、肩に痛みが出る病気です。
肩関節の動きをつかさどる筋肉のうち、たいせつな4つの筋肉(棘上筋(きょくじょうきん)、棘下筋(きょくかきん)、肩甲下筋(けんこうかきん)、小円筋(しょうえんきん))が骨に付着する部分(腱(けん))を腱板(けんばん)といい、この腱板は、上腕骨(じょうわんこつ)の上の部分(結節部)についています。
年齢とともに、この腱板の炎症や部分的な断裂、また、腱板の上にある袋(肩峰下滑液包(けんぽうかかつえきほう))の炎症や癒着(ゆちゃく)がおこりやすくなり、こうしたことが肩の痛みや動きの制限をもたらします。
また、腕の力こぶをつくる上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)の腱に炎症(上腕二頭筋長頭腱腱鞘炎(じょうわんにとうきんちょうとうけんけんしょうえん))がおこり、これによって、肩の痛みや動きの制限が現われることもあります。
[症状]
肩を動かすと痛みがおこります。腕を上げたり、背中にまわしたりするときにも痛みます。
はじめは痛みが強く、夜間、とくに朝方に強くなります。そして、しだいに肩の動きが不自由になってきます。
ただし、腱板に石灰が沈着する石灰沈着性腱板炎(せっかいちんちゃくせいけんばんえん)の場合には、ある日、急に何の前ぶれもなく肩に激痛がおこり、まったく腕を動かせなくなることもあります。
この場合は、X線写真で石灰の沈着がはっきりわかり、診断できます。
また、転んで肩を打った後や重いものを持ち上げたときに、急に肩が痛み、腕を上げることができなくなった場合には、腱板断裂の可能性があります。
したがって、五十肩と思い込まずに、整形外科医を受診し、正しい診断をしてもらったほうがよいでしょう。
[治療]
保存的治療が原則です。初期の痛みが強い時期は、消炎鎮痛薬(しょうえんちんつうやく)の内服と、関節内にステロイド薬(副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン薬)やヒアルロン酸ナトリウムの注射を行ないます。
これで、動かしたときの痛みはしだいに軽くなりますが、肩の動きが悪くなります。
この時期には、ホットパックや超短波などを使った温熱療法と、肩の動く範囲を広くする運動療法が治療の中心となります。
家庭でできる運動としては、入浴後に、前かがみの姿勢をとり、アイロンを持って腕を前後左右に振るという運動があります(図「四十肩、五十肩の運動療法」)。
肩の動きが非常に悪く、なかなか改善しないときには、小さくなった関節を包んでいる袋(関節包(かんせつほう))に麻酔薬を注入して、少しずつ広げる、パンピング療法と呼ばれる方法が用いられることもあります。
また、関節鏡を用いて、つっぱっている靱帯(じんたい)を切除する手術を行なうこともあります。
しかし、たいていは根気よく治療と運動を行なうことにより、手術せずによくなります。