粛慎(しゅくしん)(読み)しゅくしん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「粛慎(しゅくしん)」の意味・わかりやすい解説

粛慎(しゅくしん)
しゅくしん

中国の古典にみえる異民族名。紀元前6~前5世紀以来、東北辺境外に住み、楛(こ)という木でつくった矢と石鏃(せきぞく)とを使ったという。もとは東北地区方面の住民を総称したものらしいが、漢代以後は文献上の観念的名称にすぎなくなった。『日本書紀』は、阿倍比羅夫(あべのひらふ)が討ったという東北地方の民族に粛慎(みしはせ)の字をあてているが、これは、中国古典からこの名称だけを借りてきて、経略が遠くに及んだことを強調しようとしたもので、実際に粛慎が住んでいたのではない。

[護 雅夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例