神道考古学(読み)しんとうこうこがく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「神道考古学」の意味・わかりやすい解説

神道考古学
しんとうこうこがく

日本固有の民族宗教として発達してきた神道に関する諸現象を考古学的に考究する学。宗教考古学の一部門である。

 明治年間、奈良県石上(いそのかみ)神宮禁足地発掘、福岡県宗像(むなかた)沖ノ島踏査など祭祀(さいし)遺跡の調査が行われ、大正から昭和にかけて考古学の概説書にも祭祀址(あと)の項が設けられ、祭祀遺跡の報告も増加してきた。1935年(昭和10)大場磐雄(いわお)は論文「神道考古学の提唱と其(その)組織」を発表し、8年後には著作集『神道考古学論攷(ろんこう)』を発刊して、学を提唱した。第二次世界大戦後も大場を中心に研究が続き、『神道考古学講座』6巻、大場の『祭祀遺跡』などの刊行もあって徐々に普及し、昭和40年代以降は研究者の数も幅も拡大され、日本の基層文化としてとらえ研究されてもいる。

 大場の学は、神祇(じんぎ)史(文献)、民俗学、考古学をあわせもって、精神文化に迫るものであるが、とくに実質的にわが国の民族宗教として固定してきた時期とする原始神道期(弥生(やよい)~古墳時代)を中心に展開し、約40年間をかけて学の確立を図ったといえる。近年では、歴史時代でも、平城宮址をはじめ各地で文献の欠を補う好資料の発見も多く、いっそう重視されている。

[椙山林継]

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