石狩川(本庄陸男の小説)(読み)いしかりがわ

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

石狩川(本庄陸男の小説)
いしかりがわ

本庄陸男(ほんじょうむつお)の長編歴史小説。1938年(昭和13)9月から翌年2月まで『槐(えんじゅ)』に連載、後半を書き加えたのち、39年5月大観堂刊。明治維新後、没落した伊達(だて)藩岩出山支藩の家老阿賀妻謙は、藩主伊達邦夷に計らい、藩の人々160名とともに北海道開拓というまったく未知の世界へ飛び込んでゆく。石狩の開拓地をめぐる開拓使官吏との交渉、開拓資金や食糧を得るため請け負った困難な建設事業などが、北海道の過酷な自然を背景に格調高い筆致で描き出される。第1部が完成したところで作者は病没した。昭和の代表的な歴史小説であり、明治維新という時代や自らの父祖を扱った点で、島崎藤村(とうそん)の『夜明け前』にも比される。

[遠矢龍之介]

『『石狩川』上下(新日本出版社・新日本文庫)』『小笠原克著『「石狩川」の流域』(『昭和文学史論』所収・1970・八木書店)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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