眼底カメラ(読み)がんていカメラ(英語表記)fundus camera

改訂新版 世界大百科事典 「眼底カメラ」の意味・わかりやすい解説

眼底カメラ (がんていカメラ)
fundus camera

眼底の状態を撮影するためのカメラ。眼底撮影の試みは検眼鏡の開発後10年ほどですでに始まり,1890年代が黎明期であった。近年,感光材料,光学設計などが進み,眼底の記録・研究には不可欠の装置として,眼底写真撮影は眼科診療の日常業務になっている。カメラは照明光源と撮影部とが一体となって組み立てられており,主として角膜表面の有害反射をなくし,かつ径10mmに満たない瞳孔から眼内照明と撮影を行う特別の機能をもっている。1枚で撮影できる範囲(画角)を変えられる機種も多いが,拡大率を大きくすると画角が狭くなり,広角撮影では低倍率となる。最近では画角90度をカバーするレンズが実用化されている。普通の眼底カメラでは良好な散瞳状態(瞳孔がよく開いていること)が必要であるが,眼底照明に赤外線を用いテレビカメラで観察を行うと平常状態(無散瞳)での撮影が可能となる。一般的にはカラーポジフィルムが用いられるが,カルテ記録用にポラロイドタイプのインスタントフィルムも用いられる。

眼底カメラの特殊撮影法で,フルオレセインナトリウム液を造影剤として用い,蛍光のもつ光学特性を利用した眼底血管(網膜および一部の脈絡膜血管)の精密な造影検査。静脈注射されたフルオレセイン液は,血液と混ざり眼内血管を循環する際に,病的状態に応じ種々の所見を呈する。この所見を時間経過とともに連続して記録する。この方法では,(1)毛細血管の観察が容易に行える,(2)血管外への移行漏出)・貯留などを検出することにより眼底組織の病的状態(透過性異常)が診断できる,など動的・静的な検討が可能である。蛍光眼底造影法は1961年ノボトニーH.R.NovotonyとアルビスP.L.Alvisによって発表されたもので,眼底疾患の考え方を大きく転換かつ進歩させるのに貢献した。現在では,きわめて有用な眼底検査の一分野となっている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報