日本大百科全書(ニッポニカ) 「猩々(動物)」の意味・わかりやすい解説
猩々(動物)
しょうじょう
古代中国以来のなかば想像上の動物。つとに『後漢書(ごかんじょ)』にみえ、明(みん)の『本草綱目』などには詳しく説明されている。そのいる所は交趾(こうち)の熱国であって、人面人足で髪が長く、毛は黄色、声は小児のごとく、また犬のほえるがごとし、よく人語を解し、とくに酒を好む、などと記されている。わが国でも早くから知られ、すでに『和名抄(わみょうしょう)』に出ているが、とくにわが国ではこれが赤面赤毛のめでたい動物と考えられており、謡曲の『猩々』では、海中に住む猩々が高風(こうふう)という正直な酒商人に酌めども尽きぬ酒壺(さかつぼ)を与えた筋になっている。現在ではボルネオ、スマトラ島に生息するオランウータンにこの猩々の語があてられている。
[石塚尊俊]