溝口紙(読み)みぞぐちがみ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「溝口紙」の意味・わかりやすい解説

溝口紙
みぞぐちがみ

江戸時代から筑後(ちくご)国(福岡県)溝口村(筑後市溝口)で漉(す)かれる和紙文禄(ぶんろく)年間(1592~96)に、越前(えちぜん)国今立(いまだて)郡五箇(ごか)村(福井県越前市)の僧日源がこの地の福王寺に住み着いて紙漉きを伝えたのに始まり、やがて矢部川流域に広まった。コウゾ(楮)を原料とし、典具帖(てんぐじょう)に似てこれより少し厚手の紙で、書写用にされた。この紙は近世の九州地方における紙漉き発展の発端となったが、現在はほとんど衰退した。

[町田誠之]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の溝口紙の言及

【八女紙】より

…古代の北九州は筑紫を中心として製紙が盛んであったので,近代に八女紙として知られる基盤は早くからあったものと思われる。地元の伝承としては,越前五箇出身の日源上人が文禄年間(1592‐96)に廃寺となっていた福王寺(筑後市溝ノ口)を再興するとともに,矢部川の良質な水とコウゾの多いことから紙漉きに適すると判断して,故郷から3人の紙漉き職人を呼んで溝口紙として発展させた。のちに肥後など九州の各地に溝口紙の製法が伝承されたので,日源上人は九州製紙の開祖としても敬われている。…

※「溝口紙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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