況や(読み)いわんや

精選版 日本国語大辞典 「況や」の意味・読み・例文・類語

いわん‐や いはん‥【況や】

〘副〙 (動詞「いう(言)」の未然形に、推量助動詞「む」と反語の助詞「や」とが付いてできた語) 下文の文頭において、上文の叙述からすれば、下文で叙述することは、ことばでいう必要があろうか、いうまでもなく、自明のことであるという意味を表わす。なおさら。まして。
(イ) あとに述語用言に「む」「むや」を添えて用いる。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)九「設ひ百千人をして、時三月を経とも、亦断(を)ふること能はじ。況(いわんや)我れ一身のみにして、而も堪へて済(な)し辨(はた)さむや」
徒然草(1331頃)九二「道を学する人、〈略〉かさねてねんごろに修せんことを期す。況(いわんや)一刹那のうちにおいて懈怠の心ある事を知らんや」
(ロ) あとに述語を省略し「はや」「をや」「においてをや」などを添えて用いる。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)五「仮令ひ我が舌を百千有らしめて、一仏の一の功徳を讚歎すとも、於(これ)が中に少分をば尚知ること難けむ。況や諸仏の徳の辺際無きはや」
平家(13C前)七「近境の源氏猶参候せず。況や遠境においてをや」
(ハ) 特に呼応のないもの。
伊勢物語(10C前)一〇七「されど、若ければ、文もをさをさしからず、ことばもいひ知らず、いはむや歌はよまざりければ、かのあるじなる人、案を書きてかかせてやりけり」
[語誌]元来は、漢文訓読に用いられ、はじめ、文末に、「…といはむや」と補読されたものが、文頭の「況」字の訓に移行したもの。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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