沈黙の塔(読み)チンモクノトウ

デジタル大辞泉 「沈黙の塔」の意味・読み・例文・類語

ちんもく‐の‐とう〔‐タフ〕【沈黙の塔】

Dakhme-ye Zartoshtiyān》イラン中部の都市ヤズドの南東郊の岩山の上にある塔。ペルシア語で「ダフメイェザルトシュティヤーン」と呼ばれ、ゾロアスター教徒の墓場を意味する。1930年頃まで鳥葬が行われていた。

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改訂新版 世界大百科事典 「沈黙の塔」の意味・わかりやすい解説

沈黙の塔 (ちんもくのとう)

ゾロアスター教徒インドではパールシーと呼ばれる)の葬式に使われる,石あるいはコンクリート製の円塔。インドのムンバイー(旧ボンベイ)にあるもののうち,最大のものは直径が30mある。塔の上部死体を裸で置き,ハゲタカ内臓や肉をついばませる。やがて骨だけになり,それが完全に乾燥すると,中央の井戸状になっている穴に投げこまれる。つまり,彼らの葬法は鳥葬なのである。これは,彼らが,火,土,水を神聖なものとするため,火葬土葬,水葬によってそれらを死体で汚すことを嫌うことによる。
ゾロアスター教
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「沈黙の塔」の意味・わかりやすい解説

沈黙の塔
ちんもくのとう
dakhmā

ゾロアスター教徒が死者鳥葬に処する際の遺体置場。遺体は石板の上に3日間置かれ,遺体運搬人によって塔へ運ばれる。沈黙の塔とは死体の貯蔵所の意味である。最も有名な沈黙の塔はインドのムンバイ (ボンベイ) 郊外にある。

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世界大百科事典(旧版)内の沈黙の塔の言及

【ゾロアスター教】より

…この6神格は物質世界にそれぞれ,火,水,大地などの特定の庇護物を有している。信徒は特にこの3要素を汚すことを避け,拝火教の通称が示すように独特の祭祀形式や,鳥葬・風葬のためのダフメdakhme(沈黙の塔)を発達させた。ゾロアスターの教説は,当時の多神教をアフラ・マズダを最高神とする倫理的一神教に統合しようとするものであった。…

【パールシー】より

…人間には,可滅と不滅の部分があり,霊魂は不滅で,死後生前の行為に従って運命が決まり,報土たるグラスマン・ビヒシュトに往生するか,悪鬼の住むドザクに落ちると信じられている。儀礼としては,死体を鳥に食わせるものが有名であり,葬る場所はダクマ(沈黙の塔)と呼ばれる。 現在のパールシーの数は約10万人でボンベイを中心としている。…

※「沈黙の塔」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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