橈骨神経麻痺(読み)とうこつしんけいまひ(英語表記)Musculospiral paralysis

六訂版 家庭医学大全科 「橈骨神経麻痺」の解説

橈骨神経麻痺
とうこつしんけいまひ
Musculospiral paralysis
(脳・神経・筋の病気)

どんな病気か

 橈骨神経正中(せいちゅう)尺骨(しゃくこつ)神経と並び、腕を走る大きな神経のひとつです。橈骨神経のはたらきは、①肘関節を伸ばすこと(上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん)収縮による)、②上腕二頭筋と協力して肘関節を収縮すること(腕橈骨筋(わんとうこつきん)の収縮による)、③手首手指を伸ばすことです。感覚領域は手の背部で親指、人差し指とそれらの間の水かき部を支配しています。

原因は何か

 橈骨神経麻痺は、上腕中央部で上腕骨のすぐ上を走っている神経が、骨と体の外の硬い異物との間で圧迫されることで起こります。

症状の現れ方

 症状は、手指や手首が伸ばしにくく(垂れ手)なり、しびれ感と感覚の鈍さが親指と人差し指の間にある水かき部に起こります。橈骨神経麻痺は圧迫性末梢神経障害(あっぱくせいまっしょうしんけいしょうがい)のなかで頻度の多いもののひとつです。

 典型的には、深酒をしたあとに腕枕をしたり、ベンチに腕を投げ出すような無理な姿勢をすることや、腕枕をすることで上腕で神経が圧迫されることにより発症します。

治療の方法

 発症早期にメチルコバラミン副腎皮質ステロイド薬などを服用することが有用です。予後はおおむね良好で、多くの場合1~3カ月で完治しますが、麻痺を容易に繰り返す場合は髄鞘(ずいしょう)という神経のまわりを包む構造の異常がありえるので、医師に相談されたほうがよいでしょう。

野寺 裕之, 梶 龍兒

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

世界大百科事典(旧版)内の橈骨神経麻痺の言及

【運動麻痺】より

…末梢神経損傷による単麻痺は,外傷や炎症,圧迫によって生ずることが多く,損傷を受けた神経により支配される筋肉にのみ弛緩性の運動麻痺を生ずるため,それぞれ特徴的な麻痺の様相を呈する。橈骨(とうこつ)神経麻痺では,手首や手指をまっすぐに伸ばすことができなくなり,垂れ手drop handを生じ,正中神経麻痺では,母指を他の指に対立させることができなくなり,母指球が平たん化して猿手ape handの形となる。また尺骨神経麻痺では,薬指と小指の先をまっすぐに伸ばすことができなくなる。…

※「橈骨神経麻痺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」