株式相互保有(読み)かぶしきそうごほゆう

改訂新版 世界大百科事典 「株式相互保有」の意味・わかりやすい解説

株式相互保有 (かぶしきそうごほゆう)

株式会社が相互に株式を保有し合うこと。株式の持合いとか単に持合いともいう。取引関係・提携関係の維持強化,安定株主工作,株価操作等の目的でなされる。自己株式と同様,いわば会社財産の水増しである。さらに,経営者がその議決権を利用して,投資危険を負わずに会社を支配することを可能にする。日本では,1981年の改正商法が,ドイツ法にならい,他の株式会社の発行済株式総数の1/4をこえる株式を有する場合,その会社は他の会社の株式については議決権を有しないこととした(商法241条3項)。しかし,日本の企業集団内では,循環的・集団的株式相互保有が行われており,2社間の株式保有比率は少ないが,ある会社が他の複数の構成会社にその株式の数十%を保有されている例も多い。このような特殊な株式相互保有を効果的に規制することは困難であるが,独占禁止法は,間接的手段ながら,大規模事業会社の株式保有について総額規制を設けた(9条の2)。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の株式相互保有の言及

【企業グループ】より


[企業集団]
 日本の企業集団は,以下の六つの標識を備えたものをいう。(1)株式相互持合い(株式相互保有ともいう) 日本では大企業間で株式の相互持合いが盛んに行われているが,とりわけ企業集団内の企業間で進んでいる。そこでは,A社がB,C,D,……社の株式を所有し,B社もA,C,D,……社の株式を所有するというように,多角的,有機的で,円環状の持合いになっている。…

【議決権】より

…1株1議決権の原則には例外があり,〈議決権のない株式〉(〈株式〉の項目を参照)および会社の有する自己株式には議決権は認められない(242条,241条2項)。また,会社間に一定の株式相互保有の関係がある場合にも,自己株式に準じて議決権は認められない(241条3項)。なお,従来は,決議につき特別の利害関係を有する株主は議決権の行使が制限されていたが,1981年の商法改正に際し削除された。…

【コンツェルン】より

…コンツェルンでは,結合された企業は多かれ少なかれ,実質上は独立性を有しないが,法律上は独立した企業として存続する。通常,最高持株会社を中心にしたピラミッド型支配構造を形成しているが,株式相互持合い(株式相互保有)等による交錯的な形態もある。概念的に分類すれば,目的の違いによって,経営合理化的コンツェルン,産業独占的コンツェルン,利潤増大・安定化的コンツェルンがあり,また支配会社の違いによって産業資本型コンツェルンと金融資本型コンツェルンがある。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」