束(建築)(読み)つか

日本大百科全書(ニッポニカ) 「束(建築)」の意味・わかりやすい解説

束(建築)
つか

短い柱。屋根を支える小屋組みや床を支えるために床下に使われる。日本では屋根には初め合掌あるいは扠首(さす)とよばれる斜材が使われ、束は用いられなかった。中国大陸から伝えられた仏教建築でも、束を使わない二重虹梁蟇股(こうりょうかえるまた)の構造が主流であった。束が目につく早い例には、法隆寺回廊の後補の部分や伊勢(いせ)神宮正殿妻の猪子(いのこ)扠首がある。伊勢神宮では内部に梁(はり)の上に立つ棟木を支える束が用いられている。1200年(正治2)ごろに大陸から入ってきた唐様(からよう)建築では、上部架構を支えるために梁の上に独特の形をした大瓶束(たいへいづか)を用いている。同じころやはり大陸から伝えられた天竺(てんじく)様でも、梁の上に円形断面の束が使われている。江戸時代に広く用いられるようになった和小屋では、棟木・母屋(おもや)を支えるのに束を用いるのが特徴である。床を支える床束(ゆかづか)は、弥生(やよい)時代の平出(ひらいで)遺跡(長野県)にすでに認められ、奈良時代には板敷きの普及に伴い広く用いられるようになったことが遺構から明らかである。

平井 聖]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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