擂鉢・摺鉢(読み)すりばち

精選版 日本国語大辞典 「擂鉢・摺鉢」の意味・読み・例文・類語

すり‐ばち【擂鉢・摺鉢】

[1] 〘名〙
① 味噌、胡麻などの食品を入れてすりこぎですりつぶすのに用いる鉢。漏斗状陶器で、内側に細かい縦のきざみ目がある。擂粉鉢(すりこばち)。当鉢(あたりばち)
※東寺百合文書‐寛正二年(1461)一二月三〇日・光明講方道具送文書「一 雷盆」
② (男性器をすりこぎになぞらえるところから) 女性器をいう。
※浄瑠璃・七小町(1727)四「天にあらば比翼の鳥と、女が戯れに負ず劣らず、地にあれば連木(れんぎ)摺鉢(スリバチ)破鍋(はれなべ)綴蓋(とぢぶた)、離れまいと抱付(いだきつきく)
[2]
[一] 「すりばちやま(擂鉢山)(一)」の略。
※雑俳・柳多留‐五四(1811)「大きな夜なべ細工琵琶と摺鉢」
[二] 「すりばちやま(擂鉢山)(二)」の略。
※雑俳・柳多留‐一九(1784)「すり鉢で一ぱいのんで花を見る」
[語誌](1)①は粢(しとぎ)が一般化した中古頃から、水に浸けた米を擂り潰したり、穀物を製粉したりする道具として用いられた。
(2)当初は内側に、現在あるようなすじは施されていなかったが、室町時代末頃になって細かく全面に施されるようになった。それによって、様々な食材を擂り潰したり擂りおろしたりする調理器具として広く用いられるようになり、次第に「擂粉鉢」より「擂鉢」の呼称の方が優勢になったと思われる。
(3)「擂り」がすりへらすの意の「する」に通じるところから「あたり鉢」といいかえることもある。

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