損失角(読み)そんしつかく(英語表記)loss angle

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「損失角」の意味・わかりやすい解説

損失角
そんしつかく
loss angle

交流回路のリアクタンス素子において,損失電力無効電力の比を正接とする角。理想的なコンデンサコイルに交流電圧を加えると,電流は電圧に対して 90゜進むかまたは遅れて,電力の損失がない。しかし実際の素子では絶縁物にも若干の導電性電流が流れ,電線にもわずかの抵抗があり,電力の損失を伴い,電流は電圧に対して 90゜よりも小さい角度で進むかまたは遅れる。電圧,電流の実効値をそれぞれ VI ,その間の位相差をθとすれば,有効電力すなわち損失電力は VI cos θ ,無効電力は VI sin θ である。 90゜とθとの差の角度をδとすれば,損失電力は VIsinδ ,無効電力は VI cos δ となり,この比は tan δ である。 δ を損失角と呼び, tan δ をタンデルタまたは損失係数という。この値が小さい素子の材料は,電力損失の面から良質とされる。 (→交流電力 )

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世界大百科事典(旧版)内の損失角の言及

【コンデンサー】より

…実際にはわずかの電力損失を生じ,位相のずれは90度よりδだけ遅れる。このδを損失角と呼び,損失の割合をtanδで表す。コンデンサーを使用する際,電気容量と耐電圧とが重要項目であるが,用途によっては絶縁抵抗,tanδ,温度特性,形状寸法,リード線のインダクタンスに,また電解コンデンサーでは極性や漏れ電流にも注意を要する。…

【誘電損失】より

…これは,誘電体の電気分極が外部電場の変化に追従できず時間的に遅れること(誘電余効)や,電子伝導やイオン伝導による電気伝導,あるいは有極性分子の配向の緩和などによって電束密度が電場に対して位相の遅れをもち,電流と電圧の位相差が90度からずれるためである。 コンデンサーの電流Iと電圧Eとの位相差φと90度との差をδ(これを損失角という)とすると(図),このときに生ずる損失はEItanδとなるが,誘電損失の大きさを表すのにはこのtanδを用いる。これを誘電正接,損失率またはタンデルタという。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」