抜殻・脱殻・蛻(読み)ぬけがら

精選版 日本国語大辞典 「抜殻・脱殻・蛻」の意味・読み・例文・類語

ぬけ‐がら【抜殻・脱殻・蛻】

[1] 〘名〙
昆虫甲殻類などが成長に伴って脱皮する際に残した古い体皮。昆虫が羽化して空(から)になった蛹(さなぎ)、蛇が皮膚を更新するために脱ぎすてた皮などをいう。
※丹後守為忠百首(1134頃か)夏「ぬけからは木のもとごとにぬぎすてて知らず顔なる蝉の声々〈藤原俊成〉」
② 中身のなくなったあとのもの。また、形式ばかりで内容のないもの。
※雑俳・柳多留‐三五(1806)「ぬけからも三国一の水たまり」
※湯葉(1960)〈芝木好子〉「寝床はぬけ殻であった」
③ 心が他に奪われてうつろな状態であること。正気を失ってぼんやりしている人。
平家(13C前)七「汝等が魂は皆東国にこそあるらんに、ぬけから斗(ばかり)西国へめしぐすべき様なし」
④ =ぬけ(抜)
※仮名草子・竹斎(1621‐23)上「先づ当世の嫌ひ物は、打著(うちきせ)連歌、噂付、一句のぬけから、遠輪廻(とをりんゑ)
[2] (抜殻) 狂言。各流。使いの途中道ばたに酔いつぶれた太郎冠者に、主人が懲らしめのため鬼の面をかぶせる。目をさました太郎冠者は、水に映った自分の姿に驚き、ついには自殺しようとするが、そのはずみで面が脱げ主人の仕業と気づき、鬼の抜殻といってその面を主人に見せる。「天正狂言本」で「鬼のぬけがら」。和泉流では「ぬけから」と書いて「ぬけがら」と読む。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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