扇座(読み)おうぎざ

改訂新版 世界大百科事典 「扇座」の意味・わかりやすい解説

扇座 (おうぎざ)

中世における扇商人の座。室町・戦国期から近世初期にかけては,まだ製造と販売の結合した座であった。《庭訓往来》に城殿きどの)扇があるように,鷹司通の城殿駒井氏によって製作された扇が室町初期から著名である。城殿の近くに住む僧尼が製法を学び,春日東洞院ついで五条橋西へ移って作りはじめたのが御影堂扇である。御影堂扇はとくに品質優秀で,〈御影堂の製におよばず〉とされている。このほか上京小川の布袋屋,大黒屋,一条小川の加賀祐賢,川内屋,善阿弥,鎌倉屋などの扇屋があり,これらの扇屋が一つの組織にまとめられてきたのが扇座であるといえよう。扇座の本所は木工頭で,1516年(永正13)ごろ扇座には本座,中座,下座があった。本座は高辻烏丸因幡堂前の鶴屋,二条室町の菊屋,四条富小路の布袋屋,四条万里小路の雉屋の4家のおとな衆からなり,本座には亀屋以下の脇座衆が付属する。中座に入る4名は名前は不明で,三条高倉女・四条富小路脇,それに四条富小路・正親町高倉に住む者としか記されていない。下座に至っては名も住所も不明である。布袋屋の玄了尼は本座の権利を示す札を3枚ももつ最も大きな扇屋であり,正親町高倉北頰にも脇座の店を所有しており,販売を行うと同時にみずから扇の折手でもあった。しだいに扇用の紙の製造と,絵描き,骨・張り・折りが分業となり,とくに上等の扇は別々の工程であつらえられたため,それぞれ専門分化した職人に任された。城殿はおそらく薄様(うすよう)等の特殊な紙の製造を主力とし,扇製作から離れていったものと考えられる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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