感染性心内膜炎の腎障害

内科学 第10版 「感染性心内膜炎の腎障害」の解説

感染性心内膜炎の腎障害(感染症と腎障害)

(1)感染性心内膜炎の腎障害(endocarditis-asso­ciated glomerulonephritis)
概念
 急性あるいは亜急性心内膜炎においてまれに糸球体腎炎を発症することがある.黄色ブドウ球菌などを抗原とする免疫複合体が原因と考えられ,低補体血症を伴い,腎組織像も溶連菌感染後急性糸球体腎炎と同様である.
病因
 溶連菌感染後急性糸球体腎炎と同様,黄色ブドウ球菌などを抗原とする免疫複合体が腎糸球体に沈着することにより発症すると考えられている.また,クリオグロブリンも約50%の患者に認められるとされている.
臨床症状
 発熱,関節痛,紫斑など感染性心内膜炎による症状のほか,腎については蛋白尿,顕微鏡的血尿,腎機能低下などが認められる.急速進行性腎炎やネフローゼ症候群を呈するものはまれである.約50%の例で血液中のC3やC4の低下など低補体血症,リウマトイド因子,免疫複合体,Ⅲ型クリオグロブリンが認められる.ANCAが陽性になることはきわめてまれである.
腎組織像
 一般にびまん性増殖性腎炎を呈するが,まれに膜性腎症や膜性増殖性腎炎も認められる.びまん性増殖性腎炎の約半数に半月体の形成を認める.免疫染色ではIgM,IgG,C3の沈着が認められ,電子顕微鏡では内皮下,メサンギウム領域への沈着物のほか,溶連菌感染後急性糸球体腎炎でみられるハンプ様の沈着物が上皮下に認められる.
治療
 抗菌薬による治療により心内膜炎の改善が得られるが,腎症状は持続することが多い.半月体形成性腎炎に対しては副腎皮質ステロイド薬血漿交換も行われることがあるがこれらの治療の効果については確立していない.感染性心内膜炎の死亡率は約20%といわれるが腎不全を呈する場合はそれ以上になるとされている.[山辺英彰]
■文献
Kopp J, Fabian J, et al: Human immunodeficiency virus infection and the kidney. In: Comprehensive Clinical Nephrology (Floege J, Johnson RJ, et al ed), pp675-683, Elsevier, St.Louis, 2010.
Rodriguez-Iturbe B, Burdmann EA, et al: Glomerular diseases associated with infection. In: Comprehensive Clinical Nephrology (Floege J, Johnson RJ, et al ed), pp662-674, Elsevier, St.Louis, 2010.
臼井丈一,河村哲也,他:腎障害をきたす全身性疾患-最近の進歩 MRSA腎炎.日内会誌,100: 1324-1329, 2011.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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