患者の権利法(読み)かんじゃのけんりほう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「患者の権利法」の意味・わかりやすい解説

患者の権利法
かんじゃのけんりほう

医療の場で弱い立場にある患者を守り、インフォームド・コンセント充実を目ざす法律。医療環境の改善と発展のため「患者の権利法をつくる会」が1991年(平成3)10月結成され、「納得と自由な意志にもとづいて自分のうける医療行為同意、選択、拒否する権利(医療における自己決定権)」など5項目の基本権などからなる法律要綱案を提案した。すでに1989年には全国保険医団体連合会が「開業医宣言」を、1990年には日本医師会も「説明と同意に関する報告書」をだし、医師と患者の関係改善に目を向け始めている。アメリカでは、1991年に「患者自己決定法」が施行され、入院時に病院側は患者に対し、生命についての価値判断は患者自身に自己決定権があることを告げるよう義務づけられた。

[編集部]

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知恵蔵 「患者の権利法」の解説

患者の権利法

無視されがちな患者の権利を法律で確立しようと「患者の権利法」制定運動を進めるのは、1991年10月に設立された患者の権利法をつくる会。医療事故裁判を専門とする弁護士を主体に、医師、法律家、薬剤師、患者代表らが加わる。84年10月の「患者の権利宣言」から発展した。法律の要綱案は基本的な権利として、誰もが政策立案から医療に参加、平等に最善の医療を受ける権利などをあげる。具体的にはインフォームド・コンセントの権利、意に反した転医転院退院を強制されず、カルテの閲覧や写しを要求でき、快適な環境の中や在宅で社会生活を営む権利などが保障される。また、医療従事者は患者の人格の尊厳を守り、精神的・肉体的負担に配慮しなければならない。医師が暴言で患者を傷つけるドクターズ・ハラスメント(ドクハラ)などは許されない。権利保護のため、大病院や地域に患者の権利擁護委員を置き、地域に患者の権利審査会などを設置する。

(田辺功 朝日新聞記者 / 2007年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「患者の権利法」の意味・わかりやすい解説

患者の権利法
かんじゃのけんりほう

医療の場で患者の基本的な権利を確立するための法律。 1991年 10月に「患者の権利法をつくる会」が設立され,法律要綱案が提出された。これは,医療における基本権,国および地方自治体の義務,医療機関および医療従事者の義務,患者の権利各則,患者の権利擁護システムの5項目から成っている。基本権では,参加権,最善の医療を受ける権利などを明記し,国および地方自治体の義務では,患者を援助する義務などを強調しているほか,こうした権利保護のため,患者の権利審査会の設置も義務づけている。

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