定常状態(経済)(読み)ていじょうじょうたい(英語表記)stationary state

翻訳|stationary state

日本大百科全書(ニッポニカ) 「定常状態(経済)」の意味・わかりやすい解説

定常状態(経済)
ていじょうじょうたい
stationary state

個々の企業や家計などで生産、消費、貯蓄、投資などが絶えず行われていても、経済全体としてみた場合には、これらの経済変数が時間を通じて不変に保たれている状態をいう。A・スミスやD・リカードなどの古典学派の経済学者は、定常状態経済発展の長期的な帰着状態とみなした。定常状態では与件が変化せず、各経済主体は適応をし尽くして新たな適応の余地がなくなり、経済諸変数は同一規模で循環的に繰り返されるだけである。定常状態では人口増加技術進歩資本蓄積は生じない。現実の経済で定常状態が生じる可能性はきわめて少ないが、経済学で定常状態を問題とするのは、それを均衡概念の一つの方法論的な仮説として扱っているためである。

[畑中康一]

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