太地(読み)たいじ

改訂新版 世界大百科事典 「太地」の意味・わかりやすい解説

太地[町] (たいじ)

和歌山県南東部,東牟婁(ひがしむろ)郡の町。人口3250(2010)。熊野灘に突出する小半島を占め,海岸段丘をなす鷲ノ巣崎,灯明崎の二つの岬に囲まれた太地湾奥に中心集落がある。面積5.96km2は県下市町村中最小である。日本捕鯨発祥の地といわれており,捕鯨の起源は1606年(慶長11)和田頼元が刺手組を組織して鯨突漁を始めたことにあるといわれる。77年(延宝5)には頼元の孫頼治が鯨網漁を考案して捕鯨は急速に発展したが,1878年に暴風雨により100人余の死者を出し,漁船漁具なども失ったため衰えた。熊野灘の鯨が減少して南氷洋への捕鯨出稼ぎに転換したが,現在はこれも衰微し,近海でのブリ定置網,カツオ一本釣り漁業が盛んになっている。海岸一帯は吉野熊野国立公園に指定され,くじらの博物館,水族館,植物園,国民宿舎などが建設され,観光開発が進められている。JR紀勢本線,国道42号線が通じる。
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世界大百科事典(旧版)内の太地の言及

【捕鯨】より

…その矛で捕獲されていたクジラはイルカの類と想像され,捕鯨と呼ぶには規模の小さいものであったと考えられる。 組織的な捕鯨の発祥地は,和歌山県の太地町といわれている。すなわち,1606年(慶長11),源頼朝の功臣和田義盛の後裔(こうえい)頼元は,銛で突いて捕る捕鯨を始め,〈刺し手組〉と名付けられた。…

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