天王寺(東京都)(読み)てんのうじ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「天王寺(東京都)」の意味・わかりやすい解説

天王寺(東京都)
てんのうじ

東京都台東(たいとう)区谷中(やなか)にある天台宗の寺。護国山(ごこくざん)と号する。本尊阿弥陀如来(あみだにょらい)。もとは長耀山感応寺尊重院(ちょうようさんかんのうじそんちょういん)と称する日蓮(にちれん)宗の寺であった。寺伝によると、土豪関小次郎長耀が日蓮自刻の像を本尊として建立、日蓮の弟子日源によって開創されたと伝える。1452年(享徳1)日耀が中興。1621年(元和7)日長が駿府(すんぷ)(静岡市)から転住し、徳川家光(いえみつ)は寺地を寄せ、1644年(正保1)五重塔が創建されたという。正保(しょうほう)・慶安(けいあん)のころ(1644~52)日誠(にっせい)が不受不施(ふじゅふせ)を唱え、ついで日遼(にちりょう)が悲田(ひでん)派の説を唱えた。1698年(元禄11)幕府は悲田派を禁じ、日遼を八丈島に流して天台宗に改めさせ、徳川家霊牌(れいはい)の非常立退所と定め、寺内12坊を置いた。1833年(天保4)天王寺と改称させた。たびたび火災にかかり、明治維新の際には彰義隊の分営にあてられ、本坊、五重塔を残し焼失した。五重塔は幸田露伴(こうだろはん)の『五重塔』のモデルとして名高いが、1957年(昭和32)放火心中により焼失した。毘沙門天(びしゃもんてん)は谷中の七福神詣(もう)での一つとして信仰される。

[田村晃祐]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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