天水(熊本県)(読み)てんすい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「天水(熊本県)」の意味・わかりやすい解説

天水(熊本県)
てんすい

熊本県北部、玉名(たまな)郡にあった旧町名(天水町(まち))。現在は玉名市の南東端部を占める。旧天水町は1954年(昭和29)小天(おあま)、玉水(たまみず)の2村が合併して新たに天水村を設置、1960年町制施行。地名は両村の住民からの公募によった。2005年(平成17)玉名市に合併。旧町域は、開析の進んだ更新世(洪積世)前期火山岩の金峰(きんぽう)火山地からなる東半域と、その東半域の各斜面に発達した諸小河川の運んだ土砂堆積(たいせき)地と、その地先に造成された干拓地とからなる西半域とに大別される。この対照は土地利用面でも、東半域のミカン、オレンジ園、西半域の水田、メロン、イチゴ畑となって現れている。とくにミカンは、1782年(天明2)小天(おあま)村に導入された温州ミカン(うんしゅうみかん)が品種改良を繰り返しながら、ここより県下各地に普及していったもので、「ミカンの里」としての呼称は単なる観光標語ではなく、その歴史に基づいたものである。貝塚古墳、火の神祭りで知られる少彦名命神社(すくなひこなのみことじんじゃ)、対明(みん)貿易をしのばせる唐人川(とうじんがわ)筋、明国人林均吾(きんご)の墓、旧干拓堤防の石塘(いしども)、また小天温泉には夏目漱石(そうせき)の名作草枕(くさまくら)』ゆかり漱石館などがあり、古代から近代までの各時代の文化がうかがえる。

[山口守人]

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