日本大百科全書(ニッポニカ) 「大雪山(たいせつざん)」の意味・わかりやすい解説
大雪山(たいせつざん)
たいせつざん
北海道中央部に位置する火山群。「だいせつざん」ともいう。北海道の最高峰旭岳(あさひだけ)(2291メートル)をはじめ、2000メートル前後の峰々が連なる。古生層の基盤の上に、更新世(洪積世)後期に大量の溶結凝灰岩を噴出して広大な山体をつくり、その山頂部にカルデラが形成されたが、その後、安山岩系の永山(ながやま)岳、中央岳、小泉(こいずみ)岳などの火山が生成され、さらにカルデラ壁に沿って北鎮(ほくちん)岳、熊(くま)ヶ岳、白雲(はくうん)岳などの諸火山が噴出したため、カルデラの原形は著しく失われた。更新世末に御鉢平(おはちだいら)の爆裂火口が生じ、完新世(沖積世)に入って旭岳が形成され、この両者はいまも噴気孔が活動中。
植生の垂直分布は、標高800メートル付近までが針葉樹と広葉樹の混交林帯、その上は亜寒帯性針葉樹林帯からダケカンバ帯に移行し、1300~1600メートルを森林限界とする。それ以上の高所には高山植物群落が分布する。山腹には火山性湿原が多く、高所には構造土など寒冷期に形成された周氷河性の地形などがみられる。ナキウサギや、高山チョウのアサヒヒョウモン、ウスバキチョウなどが生息し、これらは北方大陸に近縁種があり、北海道が大陸と地続きであったことを示している。
大雪山国立公園の一中心をなし、表大雪山系などは「大雪山」として特別天然記念物に指定されている。
[岡本次郎]