大脳化(読み)だいのうか(英語表記)encephalization

改訂新版 世界大百科事典 「大脳化」の意味・わかりやすい解説

大脳化 (だいのうか)
encephalization

が大型化する現象。一般に体が大きな動物ほど大きな脳をもつ傾向があるので,この要因を除くため,ある集団を対象に脳のサイズを体のサイズに対して回帰させ,得られた回帰直線からの残差を脳の大小の指標(大脳化示数)とする。人類学において大脳化は,学習,認知,知性など高次機能の進化との関連から注目される。したがって,脳全体よりも高次機能を司る大脳新皮質の大きさを取り扱うべきだが,化石種では大脳新皮質の定量化が不可能であるため,脳を収めている頭蓋腔の容量を用いる。霊長類は他の哺乳類分類群に比べ大脳化傾向を示すが,原猿類よりも真猿類の方がより大脳化が顕著である。しかし,初期化石狭鼻猿では,原猿程度の大脳化示数をもっていた可能性が高く,このことは狭鼻猿と広鼻猿それぞれで大脳化が独自に進化したことを示唆する。現生狭鼻猿の中で,ヒトは著しく高い大脳化示数を示すが,類人猿の値は飛び抜けて高いわけではなく,ヒヒや広鼻猿のオマキザルなどとかなり重複する。化石人類においては,ホモ属Homoの登場以降に顕著な大脳化が始まる。それ以前の猿人の大脳化示数は,類人猿と同等,あるいは若干上回る程度である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報