日本大百科全書(ニッポニカ) 「大乗寺(石川県)」の意味・わかりやすい解説
大乗寺(石川県)
だいじょうじ
石川県金沢市長坂(ながさか)町にある曹洞(そうとう)宗の寺。正式には東香(とうきょう)山大乗護国禅寺(だいじょうごこくぜんじ)といい、金獅峯椙樹林(きんしほうしょうじゅりん)ともよばれる。本尊は釈迦如来(しゃかにょらい)。1263年(弘長3)加賀(かが)国守富樫家尚(とがしいえひさ)が石川郡野々市(ののいち)村(現、野々市市)に一堂を建立し、真言(しんごん)宗の澄海(ちょうかい)を招いて開基としたのが始まりで、のち1289年(正応2)澄海が帰依(きえ)した永平寺3世徹通義介(てっつうぎかい)にこの寺を譲り、開山として以来、曹洞宗となった。その後、瑩山紹瑾(けいざんじょうきん)が継いで大いに栄え、足利尊氏(あしかがたかうじ)が祈願所としてのち室町幕府の祈願所となり、のち後柏原(ごかしわばら)天皇(在位1500~26)の勅願所となった。曹洞宗の「日本第二の寺」として崇(あが)められたが、富樫氏の滅亡などで一時衰微した。江戸時代に金沢付近をたびたび移転、1697年(元禄10)現在地へ移る。寺宝の『三代嗣法(しほう)書』『韶州曹渓山六祖壇経(しょうしゅうそうけいざんろくそだんきょう)』『仏果碧巌破関撃節(ぶっかへきがんはかんげきせつ)』(一夜碧巌集)上下2冊、道元(どうげん)筆の『羅漢供養(らかんくよう)講式稿本断簡』などは国の重要文化財に指定されている。
[菅沼 晃]