多中心結合(読み)タチュウシンケツゴウ

化学辞典 第2版 「多中心結合」の解説

多中心結合
タチュウシンケツゴウ
multi-center bond

普通の分子は,各原子間に少なくとも一対以上の電子が配置される二中心結合によって成り立っている.しかし,分子の各結合ごとに一対ずつ電子を配置したのでは,電子数が不足してしまうような分子も存在する.たとえば,ジボラン(B2H6)では,B-H-Bという結合二対にそれぞれ2個ずつの電子を配置した二つの三中心結合を考える必要がある.ボロン化合物にはこのような例が多い.ボロン化合物のほか,金属クラスター化合物にも同じような例があり,理論的には4中心や5中心も考えられる.このような化学結合を多中心結合とよぶ.特異な例ではあるが,H3 イオン正三角形をなし,結合にあずかる電子は2個だけである.イオンラジカルには,このほかにも三中心結合がいくつか見いだされている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の多中心結合の言及

【電子不足化合物】より

…Al2(CH3)6の場合でも同様である。電子不足化合物はこのような多中心結合を含む化合物である。【中原 勝儼】。…

※「多中心結合」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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