場屋取引(読み)じょうおくとりひき

改訂新版 世界大百科事典 「場屋取引」の意味・わかりやすい解説

場屋取引 (じょうおくとりひき)

劇場,映画館,ホテル,飲食店,遊園地など,そこに集まる客に人的・物的設備を利用させる取引。サービス業の部類に属するといえる。営業的商行為の一種として定められており(商法502条7号),商法の適用範囲を決める商人,商行為という概念を構成する要素の一つに含まれる。設備を設け客を集める営業であっても,小売店のように物品の販売(501条1号)が主目的ではなく,また鉄道のように運送(502条4号)というサービスを提供するものでもない。その場において種々のサービスを提供する点に特色がある。判例はかつて理髪業者の行為は請負あるいは労務としたが,学説は一般にこれも場屋取引に含めている。

 場屋取引の営業主は,客から寄託された物品が滅失毀損きそん)した場合,それが不可抗力によったことを証明しなければ,単に無過失を証明しただけでは損害賠償の責任を免れない(594条1項)。旅館が盗賊と結託する事態にそなえた,ローマ法のレセプツムreceptum責任の思想が受け継がれている。客がとくに預けなかった場合でも,使用人等の不注意によって客の携帯品が滅失,毀損すれば,営業主はやはり損害賠償責任を負う(同条2項)。また,責任を負わない旨を掲示しても,上記二つの責任を免れることはできない(同条3項)。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報