口唇裂・口蓋裂の歯科矯正治療

六訂版 家庭医学大全科 の解説

口唇裂・口蓋裂の歯科矯正治療
(歯と歯肉の病気)

 口唇裂・口蓋裂のある患者さんでは、生後の裂閉鎖手術の影響で上あごの成長が不十分になり、上あごの歯列の幅が狭くなったり、反対咬合になる場合が多くみられます(図25)。

 そのため、一般的には6歳臼歯(きゅうし)(第一大臼歯)が生えたころから上あごの幅を広げたり、上の前歯前方に押し出して噛み合わせを整えたりする治療を行います。

 また、上あごの成長を促進するため、上顎前方牽引装置(じょうがくぜんぽうけんいんそうち)と呼ばれる装置で治療を行う場合もありますが、上あごと下あごの成長に大きな不調和がみられる時には、成長終了後、外科手術を併用した歯科矯正治療を必要とする場合もあります。

 近年では、骨延長術を利用した外科手術も行われています。個々の歯を適切な位置に並べるためには、マルチブラケット装置を用いて治療を行います。

 さらに、上あごの骨を一体化する目的で、骨が欠損している部位に骨を移植する手術(二次骨移植術)を行う場合があります。この手術により上あごの骨の安定性を高めるだけでなく、骨の欠損があった部位に骨のなかに埋まっている歯を自然に誘導したり、矯正装置を用いて歯を移動したりすることが可能になります。

 骨の欠損部に隣接した歯は欠如したり、形の異常を示すことが多いといわれていて、最終的には人工の歯(ブリッジインプラントなど)を用いて治療する場合もあります。

 口唇裂・口蓋裂に対する歯科矯正治療には保険が適用され、育成・更正医療の給付対象にもなります。


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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