出血性貧血

内科学 第10版 「出血性貧血」の解説

出血性貧血(赤血球系疾患)

定義・分類
 出血によって血液喪失するために起こる貧血である.短期間に大量出血した場合に生じる急性出血性貧血と慢性の出血が持続したために生じる慢性出血性貧血に分類される.
病態生理
1)急性出血性貧血:
短期間に大量出血した場合には,はじめは循環血液量の減少による症状がおもにみられ,検査では貧血は認められない.数日すると血管内血漿量が代償されて循環血液量が回復する.その結果はじめてヘモグロビン濃度が低下し貧血が明らかとなり,酸素運搬能の低下による症状を呈する.
2)慢性出血性貧血:
急性出血性貧血とは異なり,循環赤血球量は低下しているが,循環血漿量は増加しているので循環血液量の低下は起こらない.このため,酸素運搬能の低下による症状を呈する.
臨床症状
 急性出血時の臨床症状は,出血量に依存する.正常人では,全循環血液量の10%以下の喪失では無症状であるが,失血量が20%になると体動による頻脈,起立性低血圧の症状が現れ,40%をこすと安静でも血圧低下,中心静脈圧低下をきたし,脈拍は微弱となり,発汗,呼吸促進,四肢寒冷などのショック状態を呈してくる.全循環血液量の50%が失われると致命的である.慢性出血では,症状は鉄欠乏性貧血と同様である.種々の代償機序が働き,貧血の程度のわりには症状が軽い.
検査成績
 急性出血では,出血直後は血液検査に異常を示さないが,時間の経過とともに正球性貧血を呈する.慢性貧血では,小球性低色素性貧血で総鉄結合能上昇,血清鉄低下,血清フェリチン低下などの鉄欠乏性貧血の検査所見を呈する.
診断・治療
 出血部位と原因病態を明らかにすることが重要である.急激な出血の場合は,必要なら手術などによって止血に努める.同時に,出血による体液喪失を輸液で補う.濃厚赤血球輸血は重症貧血には即効性がある.600 mL以上の出血がある場合には濃厚赤血球を輸血し,1200 mL以上の場合には濃厚赤血球と代用血漿剤を併用する.慢性出血では,原疾患があれば原疾患の治療を行いながら鉄欠乏性貧血の治療を行う.[伊藤悦朗]
■文献
Hillman RS: Acute blood loss anemia. In: Williams Hematolgy, 6th ed, p 677, McGraw-Hill, New York, 2001.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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