仙境異聞(読み)せんきょういぶん

改訂新版 世界大百科事典 「仙境異聞」の意味・わかりやすい解説

仙境異聞 (せんきょういぶん)

平田篤胤(ひらたあつたね)の神道書。別名《寅吉(とらきち)物語》。写本により巻数不定。1822年(文政5)成立。1820年,篤胤は,神かくしに遭って行方不明になり,その間仙界で暮らしていたと称する寅吉なる少年と面談する。本書はその記録。自己の神学体系に幽冥信仰を導入し,またみずから〈幽世(かくりよ)〉の実在を信じた篤胤の神秘思想をうかがわせる。篤胤はこの少年に〈幽界〉への手紙を託したほどであった。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の仙境異聞の言及

【心霊学】より

…その後まもなく心霊主義と袂を分かった心霊研究psychical researchは,やはり霊媒を対象に研究を続けたが,死後生存の証明は結局できないまま,その後確立された超心理学的方法にしだいに道を譲り,現在に至っている。 日本でも古くから心霊現象の存在が報告されてきたが,江戸末期の国学者平田篤胤らの客観的な記述による調査研究(例えば《仙境異聞》《勝五郎再生記聞》)はあったものの,科学的な研究が開始されたのは明治期以降である。1884年,東京帝国大学の井上円了は,文明開化の風潮の中で,妖怪学の研究に着手,86年には同大学に〈不思議研究会〉を開設した。…

※「仙境異聞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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