亜酸化銅整流素子(読み)あさんかどうせいりゅうそし(英語表記)copper suboxide rectifier cell

改訂新版 世界大百科事典 「亜酸化銅整流素子」の意味・わかりやすい解説

亜酸化銅整流素子 (あさんかどうせいりゅうそし)
copper suboxide rectifier cell

多結晶半導体整流素子の一つ。銅板(電気銅)を約1000℃で表面酸化させ,約500℃で焼きなまし,次いで急冷させると,表面に黒色酸化銅(Ⅱ)CuOの層ができる。このCuO層を取り除いて赤色の酸化銅(Ⅰ)Cu2O(亜酸化銅ともいう)の層を露出させ,易融合金を吹き付けるなどして電極(陽極)を作る。基板の銅を陰極にする。この銅と酸化銅(Ⅰ)との間の整流作用を利用した整流素子で,酸化銅から銅へ流れるのが順電流である。セレン整流素子に比べて許容温度,逆耐電圧(約6V)は低いが,順電圧低下(約3V)も低いので,微小電流用の整流素子として計器やリング変調器などに多用された。順方向電流密度は40mA/cm2くらいである。なお,シリコン整流ダイオードが開発されて以降,整流素子はほとんど単結晶半導体整流素子やパワートランジスターが占めている。
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