二次性ヘモクロマトーシス

内科学 第10版 の解説

二次性ヘモクロマトーシス(ヘモクロマトーシス)

(2)二次性ヘモクロマトーシス
病因
 表13-6-2に示すように二次性あるいは続発性へモクロマトーシスの病因は多様である.二次性へモクロマトーシスとして最も多いものは,重症の慢性貧血に対する長期間にわたる頻回輸血による鉄過剰症である.
 先天性の病態としては,ピルビン酸キナーゼ欠乏症やグルコース-6-リン酸脱水素酵素欠乏症などの遺伝性溶血性貧血や重症型サラセミアなどでは輸血がなくても鉄過剰症になる.遺伝性鉄芽球性貧血などのように赤芽球系の無効造血を伴うものも鉄過剰症になる.無トランスフェリン血症では,吸収された鉄が骨髄に運ばれず,肝実質細胞を中心に沈着する. 後天性の病態としては,頻回の輸血,鉄剤過剰投与,晩発性皮膚ポルフィリン症などがある.ウイルス性肝炎・アルコール性肝障害・非アルコール性脂肪性肝疾患などの慢性肝疾患においても軽度から中等度の鉄過剰症が合併することがある.
病態
 鉄過剰症に至る機序はそれぞれの疾患によって差があるが,鉄過剰症の結果としてもたらされる病態は本質的には遺伝性へモクロマトーシスと同様である.
診断
 二次性へモクロマトーシスをきたす基礎疾患があり,血清フェリチンの上昇があったら二次性へモクロマトーシスと考えてよい.肝障害や糖尿病のような臓器障害が明らかであれば,診断はいっそう確実である.
治療
 遺伝性へモクロマトーシスに準じて瀉血を行うことが有効である.しかも瀉血療法によって晩発性皮膚ポルフィリン症では皮膚症状が改善し,C型肝炎では肝機能検査の改善がみられることがある.瀉血療法ができない赤血球造血不全または慢性溶血性貧血の鉄過剰症には鉄キレート療法が推奨される.無効造血亢進に伴う鉄過剰症では遺伝性ヘモクロマトーシスよりも早期に臓器障害が現れるため,鉄キレート療法が必要である.メシル酸デフェロキサミンは静脈内あるいは皮下への持続投与,あるいは頻回の筋肉内投与が試みられる.輸血後鉄過剰症では,新規鉄キレート剤デフェラシロクスが多く使われるようになり,その導入開始の目安は,輸血総量が40単位,血清フェリチンが1000 ng/mLをこえた場合である.予後は臓器障害と原疾患に依存する.[高後 裕]
■文献
Bacon BR, Adams PC, et al: Diagnosis and management of hemochromatosis: 2011 practice guideline by the American Association for the Study of Liver Diseases. Hepatology, 54: 328-343, 2011.Adams PC: Hemochromatosis. In: Zakim and Boyer’s Hepatology A Textbook of Liver Disease, 6th ed, pp1127-1144, Elsevier, Philadelphia, 2012.
戸田剛太郎:ヘモクロマトーシス.肝臓病学(井廻道夫,熊田博光,他編).pp350-361,朝倉書店,東京,2006.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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